戦後・被爆80年 平和を願うネットワークの取り組み
県庁19階のイベント開催を中心に
神田 順一
戦後・被爆80年の節目の取り組みとして、7月26日から8月15日まで石川県庁19階展望―ロビーにて非核・平和を希求する市民団体の多彩なイベントやパネル展が開かれました。この取り組みは戦争をさせない石川の会と非核の政府を求める石川の会が呼びかけて、昨年12月に発足した「戦後・被爆80年 平和を願うネットワーク」の賛同団体がそれぞれ開催したものです。 週刊「うたごえ新聞」2024年9月23日号に掲載されていた「被爆80年」の取り組みの3つの視点にもとづき報告します。
①年間を通して各団体が被爆80年をテーマとした行動や企画を立案し、統一した取り組みとする。
② 連帯行事や演奏会などを一覧表にまとめて発信する。
③ 若い世代が中心となって進めていけるプロジェクトを構築する。
ネットワーク相談会の開催
2024年12月8日、第1回相談会を開催(12.8平和を考える集い・終了後)
2025年2月11日、第2回相談会を開催(2.11「建国記念の日」反対集会・終了後)
2025年5月11日、第3回相談会を開催(非核の政府を求める石川の会総会記念企画)
2025年8月 1日、第4回相談会を開催(ピースディ・終了後)
<コメント> ネットワークの賛同団体は17団体
・ネットワークの連絡先を戦争をさせない石川の会とし、同会HPを活用した。
・相談会は賛同団体等の集会や総会時に併せて開き、参加しやすくした。
ネットワークの広報活動
- 最初に「Googlフォーム」を利用して、賛同団体を募りイベント登録をすすめた。
- 賛同団体に戦後・被爆80年の取り組みの早期着手を依頼し、県庁19階での「夏の企画一覧」(8団体のイベント、5団体のパネル展示)の共通チラシを本番3ケ月前、2025年4月中に10,000枚作成。
*印刷費用は戦争をさせない石川の会と非核の政府を求める石川の会が負担した。
- 戦争をさせない石川の会HPに「夏の企画一覧」を掲載し、Webサイトで賛同団体のイベント・チラシを閲覧できるように設定した。
- ネットワークのロゴマークを作成し、賛同団体のイベント・チラシや機関紙等への掲載を依頼し、共通チラシと併せて統一した取り組みをすすめた。
- 各市民団体の機関紙にネットワークの取り組みを寄稿し、参加・協力を呼びかけた。
(いしかわ県民教育文化センター「センター通信」、石川県学習協季刊誌「コスモス」、年金者組合石川県本部「年金者しんぶん」、石川県保険医協会「石川保険医新聞」)
- 非核の政府を求める石川の会会報「非核・いしかわ」4月号~7月号に賛同団体のイベントやメッセージを連載。8月号は県庁19階でのイベント・写真特集を掲載 / 別紙
<コメント>地元マスコミの報道について
・6月23日、県政記者室にてネットワーク賛同団体が共同記者会見
・7月26日「悪魔の飽食」合唱&戦医研講演会、8月1日ピースディ、6日「平和のパネル展」スペシャルイベントには多数の新聞、テレビの取材があった。
・北陸中日は賛同団体のイベントを連日取材し、県民への大きなアピールになった。
【反省点】8月6日、「平和のパネル展」スペシャルイベントの開始時間(10:00)をネットワークの共通チラシで(10:30)と誤記載したこと。当日遅れて来場した人たちから苦情が寄せられたため、主催団体が速やかに県管財課に会場の使用時間延長、紙芝居演者に再演をお願いし、対処していただいた。
県庁19階展望ロビー・受付担当 県総務部管財課の対応
- 県庁19階展望ロビーでの「イベント案内」は普段はA4判1枚であるが、今年8月はイベント企画が大幅に増えたため、A4判2枚に印刷。
- 8月7日、日朝協会石川県支部の映画鑑賞「三たびの海峡」と講演会イベントが大雨のため中止になったとき、管財課担当者から「別の日に延期してはどうか」と好意的な対応だった。
⇒ 日朝協会石川県支部は10月7日(火)13時半から県庁19階にて改めて開催。
- 8月11日、ドキュメンタリー映画「荒野に希望の灯りをともす」上映会に来場された昨年の管財課担当者から「もっと大勢の人に観てもらうため、独自チラシを作ってほしかった」との意見が寄せられた。
- 「一日本兵が撮った日中戦争」「治安維持法制定100周年パネル展」「鶴彬パネル展」への妨害行動が懸念されたが、警備上の問題は発生しなかった模様。
<コメント>来場者からのメッセージ
治安維持法国賠同盟県支部がパネル展会場に配置した「平和の課題とかかわって 対照年表」を持ち帰えられた来場者からのメッセージを紹介します。
「鶴彬のパンフといっしょに置かれていた、平和の課題と関わっての年表、素晴らしい資料です。私たちは明治以降の歴史はざっとしか学んでいません。世界、日本、石川それにかかわる教育と治安維持法がわかりやすく、曖昧だったことがやっと理解できそうです。まだ幼い頃、父が戦争に負けたみたいだった、バナナが高いとこぼしていたので、不思議でした。このような疑問が分かり、作成のご苦労に敬意を表したいとメールしました」
8月1日、ピースデイ 馳浩知事の来賓挨拶
おはようございます。毎年暑い中で「平和のおりづるの集い」が開かれていますが、今年は県庁で開いていただきました。西本さん、ありがとうございます。
今年は戦後80年でありますが、平和を祈る思い、そして核兵器のない世界をめざすという思いはみんな一緒であります。今日は西本さんからもお話があったと思いますが、これまでの皆さま方の取り組みへの敬意とともに一人でも多くの方にこの思いを届けることができるよう活動をお願いします。私も同様に参りたいと思います。今日改めて大切なピースディを皆さんで過ごしていただきたいと思います。ありがとうございます。
<コメント> 馳知事は3年連続、ピースデイで来賓挨拶
馳知事は、「反核・平和おりづる平和のつどい実行委員会」(実行委員長・西本多美子 事務局・石川県生活協同組合連合会)が毎年夏、卯辰山・平和の子ら像前で開催している〝ピースデー〟に、衆議院議員時代に4回(2007年~2010年)、現職知事として2回(2023年、2024年)、来賓挨拶されている経緯があり、今年も温かい激励挨拶がありました。
県庁舎の利用、ネットワークの共同の取り組みについて 賛同団体の感想・意見
〇新日本婦人の会石川本部
・このように、平和の取り組みをネットワークとして、パネル展と合わせて、一同に会するのは大変よいと思いました。
・県庁の昼の休憩時間に食事をもって19階に来る方がいましたので、平日のイベントは、お昼の休憩を利用したほうが人が集まるのかもと思いました。
〇平和サークル・むぎわらぼうし
県内の様々な団体が不戦の思いでつながり、日本の加害と被害の歴史に向き合う「戦後・被爆80年」の企画は、ともに歴史に学び戦争のない世界を築いていこうという、まさに「ともに歩もう」の連帯の精神です。節目となるこの年に、不戦・核廃絶の誓いを新たにする機会を作ってくださった呼びかけ団体に感謝します。
当日は、たまたま観光で来ていた方も参加され、企画部分とそうでない部分が垣根なくつながる会場ならではの出会いがありました。このような場所が無料で利用できることはありがたいことです。石川県には今後も、県民が自由に表現できる場所を提供し続けてほしいと思います。
〇石川のうたごえ協議会「いしかわサマー・ピース・フェスティバル」
2026年7月20日(月・休日)、県庁19階「交流コーナー」を仮予約。
〇金沢うたごえの会
普段は金沢市民芸術村で月1回、うたごえ例会を開いています。今年は「平和のパネル展」に賛同して県庁19階で平和を願う歌を中心に来場者の皆さんと歌い交わしました。今後も8月例会は「平和のパネル展」期間中に県庁19階でうたごえ例会を開くことにしました。2026年8月8日(土)午前中、県庁19階「交流コーナー」を予約。
<コメント>反核・平和おりづる市民のつどい実行委員会・参加団体の取り組み
- 反核・平和おりづる市民のつどい実行委員会は、2005年から毎年夏に県庁19階で「平和のパネル展」を開催している(開催期間は8月6日、9日、15日を含む2週間)。2026年は8月4日~17日の予定、初日はピースディ2026として開催する。
- NPO法人はだしのゲンをひろめる会は、2013年から毎年「平和のパネル展」来場者の感想・メッセージをHPに掲載している。 https://hadashinogen.jp/
- 石川県青年団協議会が今年8月6日、スペシャルイベントとして戦争体験者証言DVD制作につき報告したことは次世代継承の取り組みとして特筆したい。
- 核戦争を防止する石川医師の会は10月8日、いしかわ四高記念公園で「LED candle night 核廃絶の灯をともす 朗読の調べ」を開催する。
まとめ
「戦後・被爆80年」の取り組みの3つの視点のうち、①賛同団体による統一した取り組み、②「夏の企画一覧」の共通チラシと戦争をさせない石川の会HPによるWeb情報・発信は実現できたが、③若い世代が中心のプロジェクトづくりは未達成である。
4歳被爆の西本多美子さんは、「生の被爆者に会えるのは80年が最後。次の90年には直接、被爆証言できる被爆者は殆どいないだろう。被爆の実相を継承するため、80年の今年は特別に大事」と話されている。
継承とは先人から受け継ぐだけでなく、自分からさらに次の世代に手渡していくもの。このような戦争体験者・被爆者たちの平和を希求する渾身の訴えを自分事として受け止め、伝える力、つながる力、続ける力が今問われている。
(非核の政府を求める石川の会事務局長)





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