纐纈厚さん講演動画及び講演要旨「自公政権に替わる新たな政権構築の展望を求めて」

 9月30日、金沢市近江町交流プラザ4階集会室で開かれた「大軍拡・大増税を許さない秋の大学習会」のYouTube講演動画及び講演要旨を本会ホームページに掲載します。

 演題は「自公政権に替わる新たな政権構築の展望を求めてー岸田政権の『戦争政治』終わらせるために」、講師は明治大学国際武器移転史研究所客員研究員、山口大学名誉教授の纐纈厚(こうけつ あつし)さんです。主催は石川憲法会議。石川革新懇・石川県平和委員会・戦争をさせない石川の会です。

*講演動画は前半の講演、後半は質疑応答ですが、後半はバッテリー不足で中途で終了しました。ご容赦ください。

 

【纐纈厚さんの講演要旨】

 ◆岸田政権の本質

 岸田政権の本質を率直に言えば、疑似安倍政権としての軍事国家日本にすることにあります。「死せる安倍、岸田を走らす」に等しい。即ち、多国間軍事ブロックの促進による右傾化・軍事化推進政権であり、反民主主義と憲法改悪による保守反共政権であり、日米軍事同盟絶対化による重武装・同盟依存日、政権であり、国民不在の権力政治による資本利益優先政権だということです。

 先ず①「戦争できる国」から「戦争する国」への大転換について述べます。これは集団的自衛権の行使容認と新安保法制等により、「戦争のできる国家・日本」に変質することは、軍事大国化への第一段階です。「日米豪印戦略対話」(通称QUAD)による四カ国の相互運用機能の高度化は、軍事大国化の第二段階です。防衛費大増額や敵基地攻撃能力保持の具体化、NATOとの連携によるアジア版NATO体制の構築から、将来的にNATO+インド太平洋軍事同盟による対中国・対ロシア封じ込め=「戦争する国家・日本」に変質することは、軍事大国化の第三段階と言えます。

 ②「統合司令部」(=戦争指導部)設置は、指揮命令の流れが、首相・防衛相が自衛隊に対してより直轄的なものになることを示します。

 ③「アジア版NATO」構想の危うさについて述べます。首相の欧州とインド太平洋の安全保障が切り離せないという認識と「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」という危機感の表明は、米国主導の戦争に常時参戦することに連なるものです。しかしロシアとウクライナの関係を中国と日本の関係に置き換えるのは、歴史的にも政治的にも根本的な間違いです。

 ④軍事同盟強化に基礎を置く防衛外交は極めて危険だということです。多国間軍事同盟は自動参戦条項となって戦争の呼び水となるということです。日英同盟が日露戦争を、日独伊三国同盟がアジア太平洋戦争を呼び込んだ歴史事実と向き合う必要があります。

◆拍車かかる岸田政権の〝戦争政治〟

 防衛費の増額は世界第3位の軍事大国となることを意味し、反撃能力の保有は「専守防衛」の放棄と先制攻撃戦略の導入に連なり、「安保3文書」は軍事国家日本への明らかな公式宣言であり、防衛産業強化法は武器輸出解禁と「死の商人」国家日本の誕生となり、南西諸島へのミサイル基地設営は日米軍事一体化と在日米軍の強化となるものです。「軍事には軍事を」は危険で愚かな路線です。「軍事には外交を」でなければなりません。以下の点を注視します。

  • 防衛費の大増額は国民の暮らしを無視した防衛利権が絡むものであり、軍事大国は貧困大国の道であることを見ておくことです。安倍政権以降、軍事予算は増加の一途をたどり、殊に岸田政権2年目の23年度以降は概算要求の段階で青天井の状態になりました。既に日本のGNPはこの30年間成長が止まり、世界に占める日本のGNP比率は90年代半ばに18%程度あったものが6%になりました。同時に1200兆円もの借金を抱えています。
  • 憲法と国連憲章に違反する反撃能力の保有も大問題です。敵基地攻撃能力への転用が想定される主なスタンドオフ(敵の対空ミサイルの射程外から発射が可能な)ミサイルには極超音速誘導弾や高速滑空弾などがあり、政府は一発5億円もするトマホークの400発購入(日本は高額で購入)を決定し、南西諸島への配備を進めています。そしてその米国側の狙いは「中国の(米国本土への)ミサイル攻撃の第一撃を確実に吸収できるようにすること」だと2016年に大統領補佐官が明かしています。これはとんでもないことです。
  • ロシア・ウクライナ戦争を奇禍として日本の安全保障の基本をどこに置くか。これをヒント・教訓にせねばなりません。この侵略は、NATOの多国間軍事同盟の対ロシア抑止力が機能不全だったこと、賛否があるもののウクライナのNATO未加盟がロシアの侵略の要因とする分析には過ちがあり、NATOの対ロシア恫喝(東方拡大・東方浸透)の負の帰結として戦争を誘発した面を見なくてはなりません。

 冷戦終結後、旧ソ連を含む東欧諸国も次々にNATOに加盟し、ウクライナも加盟を希望し、ロシアがNATO「不拡大」の確約を要求するなかで、米国は「ウクライナの主権を尊重する」との立場でした。しかし「核兵器の先制使用はしない」という約束が、結果的に通常戦争となってしまったことについては、深く検討を要します。

◆岸田政権はどこに向かうのか

 日本を危険な方向に追いやる岸田政権の正体は内閣支持率の低下で証明済みと言えます。「聞く力」を示さず「逃げる力」を増す政権に私たちは「追いかけ・追い越す力」を発揮すべきです。戦争政治を阻み、自公政権に替わる連合政権樹立のためには、平和と民主主義を求める護憲運動の活性化が不可欠です。その運動を最大化・最適化するためには「野党共闘」(=護憲運動)が強く求められます。それには全国革新懇の次の3つの共同目標が重要です。

 ①軍事大国化の帰結である貧困大国化ではなく、経済を国民本位に転換し、暮らしを豊かにし、②護憲運  動の深化により、日本国憲法を生かし、自由と人権と民主主義を発展させ、③非核・非同盟・中立の立場で日米安保条約をなくすこと。これらが大切です。

 岸田自公政権は、疑似安倍政権として国民生活を蔑ろにしつつ、対米従属政治を続けてきました。それは神話(絵空事)としての抑止論と、戦争を呼び込むものでしかない軍事同盟論を口実に「戦争する国」に向かってひた走ってきた道です。それによって日本は「準戦時体制」に入り、危険な事態に立ち至りました。そうではなく日本は、抑止力神話と同盟信仰論から脱却し、平和・中立・非同盟の道を歩まねばなりません。

 「戦争が廊下の奥に立つてゐた」(渡辺白泉)

 「戦前の一本道が現るる」(三橋敏雄)

(まとめ 非核・いしかわ編集部)

◎9月30日に石川憲法会議ほか3団体が主催した講演会の講演要旨です。

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