戦争をさせない石川の会と九条の会・七尾の共催により、11月22日、七尾鹿島労働福祉会館にて、須藤春夫本会事務局長による「安倍政権のメディア支配と情報統制は何をねらうか」と題する講演会が開かれた。
須藤春夫氏の講演レジメを以下に紹介する。
講演:安倍政権のメディア支配と情報統制は何をねらうか
1.安倍政権のメディア支配の特徴
(1)放送への介入と支配〜放送法を利用した合法性を装った介入
① 放送法の番組準則を理由に個別番組を攻撃
(資料1)注:資料1~11は当日配布資料/PDF:260KBを参照
放送行政が独任制の大臣の権限とされているという問題もあるため、番組編集準則を放送事業者の自律のための倫理規定として解釈・運用しない限り、放送法の内容規制を合憲とみることは難しい。同じことは番組調和原則にもあてはまる。番組編集準則は、従来、放送事業者の自律のための倫理規定であるとされ、旧郵政省もそのように説明していた。学説でも同様である。
② NHKの経営委員任命権を利用した支配
NHK経営委員は12名(任期は3年)。衆参両院の同意を得て内閣総理大臣が任命。経営委員長の選出は合議制。会長の選出には経営委員9名の同意が必要。経営委員会は月1回開催。
(2)朝日新聞を狙い撃ち、読売・産経新聞を厚遇
① 朝日新聞の「従軍慰安婦」誤報問題、福島第1原発吉田昌郎所長誤報発言を理由に徹底攻撃(資料4)
- 朝日の「慰安婦」記事誤報問題は、誤報の取り消しが遅すぎ、また池上彰氏のコラム不掲載は報道機関としてお粗末すぎる。また、なぜこの時期に検証記事を掲載したのか。朝日は同時に福島第一原発事故をめぐる吉田昌郎所長の調書を報じた今年5月20日掲載のスクープ記事も取り消した。
- 読売、産経、出版社系週刊誌による朝日バッシングが始まる→ネット上でも朝日バッシング→「売国奴」「国益を損ねた」「国賊」の言葉が復活→読売はこの機会を「千載一遇のチャンス」ととらえ朝日離れの読者を吸収する。
- リベラルな論調のメディアを攻撃することで言論の多様性を失わせる。
- 戦争ファシズムは、ある日突然に来るのではなく、初期は反対派の言論排除から始まる(もの言えぬ社会を作る)。いまはその段階に近い。週刊誌は朝日バッシングと嫌韓路線で販売部数増大をねらう(戦前と同じ状況)→そのもたらす結果について想像力が働かず、メディアの責任を放棄。
②全国紙幹部との会食、読売新聞、産経新聞への特ダネの提供(資料5)
- 安倍首相は、小松一郎駐仏大使を内閣法制局長官に起用を固めるとの1面トップ特ダネを読売がだす(13年8月2日付け)。
③ 全国紙新聞の資本系列に沿ったテレビ局を選択して出演
読売=NTV、産経=フジテレビ、朝日=テレビ朝日、(毎日=TBS)
(3)周到なメディア戦略の実施
① 演出された首相発言(広告代理店が介在)
・プロンプターを利用した身振り手振り
② ぶら下がり取材の原則廃止と記者クラブの利用(資料6)
- 不用意発言をさせないための方法
- 記者クラブであれば、質問が事前に提出されている(2つの事例)
- 9月24日自民党両院議員総会で総裁に再選された安倍首相の記者会見
- 9月29日ニューヨークでの国連総会終了後の内外記者会見顛末
- 朝日が少し触れただけで他のメディアは報じていない。
- 政府側はあらかじめ質問者を5名に限定。NHK、共同、ロイター、テレビ朝日、アメリカの公共ラジオ局NPR(National Public Radio)の5人
③ メディア対策とメディア操作の違い
- メディア対策〜用意されない質問にどう答えるかを徹底的に検討し対応すること
- メディア操作〜想定しない質問が出ないよう記者クラブで質問者を限定したりあらかじめ質問の提出をさせる
④個人情報保護法、秘密保護法などにより権力が秘密保持を強化
2.BPO意見書(11月6日)が指摘する政府の番組介入
- BPO(放送倫理・番組向上機構)とは→放送における言論・表現の自由確保と視聴者の基本的人権を擁護するための第三者機関。
- 放送による表現の自由は憲法21条によって保障され、放送法第1条2項で定めている→この原則は、放送事業者や番組制作者に課せられた「義務」ではなく、この原則を守るよう求められているのは、政府などの公権力。
- 政府が番組への介入の根拠としている、放送法第4条第1項の放送準則は法規範ではなく、放送事業者が自律的に番組内容を編集する際のあるべき規準、すなわち「倫理規範」である→学会でもこの見解が定着。
- 安倍首相、菅官房長官、高市総務大臣はいずれも「法規範」と主張→反知性主義の政治姿勢=戦争法制を合憲とする姿勢と共通している。
3.政権にすり寄るメディアと萎縮するメディア
(1)読売、産経新聞の偏向報道の問題性
- 「憲法改正」論をリードする読売の論調(資料7)
- 安全保障環境の変化を強調し、軍事的「抑止力」の必要性を強調
- 非科学的な世論調査手法で世論誘導をはかる(資料8)
- 戦争立法に批判的勢力の意見・動向について過小な報道
- 新聞資本と民放資本の連動が進み論調が一体化する→言論・表現の多元性を求めた放送法に違反
(2)NHKが危ない(追加資料で説明/PDF:344KB)
- 政権批判をしないNHKの報道→NHKの性格は何か?
- 経営計画「NHKビジョン2020」のねらいは何か→①公共放送から公共メディアへの転換宣言、②東京オリンピックを梃子に4K、8Kテレビの先導役を果たし、1,860億円の4K受像機市場を開拓、③国際放送の強化→「積極的平和主義」を世界に宣伝(資料9)
- 受信料の支払義務化をねらう自民党と籾井会長発言→受信料支払義務化は国営放送への道(資料10)
(3)北國新聞の報道姿勢はジャーナリズムといえない
- 地方紙では政権寄りの論調として特異な存在(資料11)
- 地域メディアをどう改革するか→メディアの内容分析と批判の必要
4.安倍政権のメディア支配のねらいは何か
- メディアの分断と批判的メディアの弱体化→市民の知る権利を阻害。戦争する国に向かうには市民に真実を知らせない秘密主義を徹底化→報道ランキング資料
- 政権の広報メディアづくりにとどまらず、戦後レジームからの脱却にむけた世論(イデオロギー)操作→真実を覆い隠す虚偽、欺瞞を通してのイデオロギー操作→戦時中の広告が参考になる
- 安倍政権によってメディアのチェック機能(権力監視機能)を突破された。安倍政権はいろいろなことを突破したが、民主的なチェック機能も突破されてしまった。メディアの危機は日本の民主主義の危機→メディアの危機を政府の広報機関化だけの批判に止めてはいけない。私たちの知る権利の危機、ひいては民主主義の危機と認識する必要。
- 自民党・安倍政権の国家主義、全体主義の体質は、メディア対策だけでなく市民の反戦意識・行動を徹底排除するための監視体制、情報管理・統制体制を強化することに踏み出す→異論を排除するための装置として言論統制(多様な言論メディアの存在と国民の表現の自由を否定)とともに、「思想信条の自由」という個人の内面を管理する対策を強化する→秘密保護法、マイナンバー制度、共謀罪の画策→これらは、「知る権利の侵害」とだけとらえるのでなく、支配体制を維持するために、思想、表現、集会、結社などを権力的に抑圧することを目的とする治安立法の性格を持つものとして批判する必要がある。国民を萎縮させる威嚇により政府批判を押さえ込む。
5.メディアを批判的に読む能力を持つ市民の形成
- メディアを監視し励ます運動の必要性。
- メディア操作による世論形成、欺瞞性を見抜く力を持つ→真実を暴くことこそが最も力になる。
- 市民による民主的言論空間の形成→多元的な意見表明にもとづく熟議をとおして自律的市民となる必要。
2015・11・22 須藤春夫氏 講演会 感想文(順不同)
①テレビや新聞のみが我々一般市民の情報源である。知らないうちに洗脳されているのだと心配である。多様な情報に接するように心がけなければ。
②公平性が国益を優先される(ママ)時代に入ってしまったんだなぁ。今シールズなどの若者が民主主義を旗に、戦争法反対の大宣伝をしているが、このすばらしい若者も近い将来何らかの方法で頭を押さえられると思う。その時は、じじ、ばば、命をはって守ってあげなくてはならないネ。
③安倍政治はおかしいといつも思っていますが、メディアの面でもどれだけ計画的におかしな方向へねじ曲げようとしているか、とてもわかりやすく教えていただきました。このままにしておいては、あっという間に戦争をする国になってしまうと思いました。国民もその気にさせて…。多様な情報が少なくなって国益が優先させられてきている。この国は本当にあぶなくなってきていることがよくわかりました。とても良い学習会でした。
④聞けば聞くほどどんなにひどいことになっているのか、背筋が寒くなってきました。よい講演をありがとうございました。
⑤たいへん勉強になりました。NHKの放送に怒りを覚えること度々あります。しっかり皆と話し合う機会をもって共有していきたいと思いました。
⑥常々考えていたことに通じるお話をいただきました。もっと心して外に向けて発信せねばと強く感じたところです。ありがとうございました。
⑦レジメに書かれてあることを全部聞きたいと思いました。しかし1時間という限られた時間の中ではBPOのことを中心に話していただいて、タイムリーで分かりやすくてよかったと思いました。安倍のメディア戦略にのせられないように、メディアリテラシーを身につけること、良心的なメディアを応援することが大事なのですね。
⑧BPOのホットな材料からメディアのあり方の基本を教えていただきました。市川さんの「番犬の流儀」を読んでみたいと思います。
⑨重要なテーマで1時間あまりの講演では語りきれない部分があったかと思うが、分かりやすい資料を用意されたので大いに勉強になる。このような会合を地道に続けられることが大切であろう。若い方にも大いに声をかけられたい。遠路はるばる来たかいがありました。ごくろうさまです。
⑩街宣車から降りた(て地上デモする)右翼、ネトヨク(ママ)のヘイトスピーチ無法は街宣車を取り締まらないケイサツ 左からのデモ、訴えで上記を吹きとばすことを考えねばならない。「日本会議」側からの組織化を大目に見て放置してはよくないと思う。



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