戦争をさせない石川の会も参加している「戦争法廃止!憲法改悪阻止!」を呼びかける八団体の主催する『平和憲法施行69周年記念県民集会』が憲法記念日の5月3日に本多の森ホールで開かれ、上智大学国際教養学部教授・中野晃一さんが表記の主題で記念講演された。
守る「対象」の転換
中野さんの講演は、冒頭、現状分析と説明から始まり、安全保障政策の変換、今後の展望へと広がりをみせた。
冷戦期の緊張状態から続くアメリカ圧力と自衛隊との関係。それに対して、日本では憲法九条という軸が縛りとして機能し、「専守防衛」、「個別的自衛権」による防衛体制が確立された。武力ではなく「外交」で解決をめざし、無理な場合には「必要最小限」の対応を行うという大原則。
その理念の下、「個別的自衛権」の事実的な発動はなされておらず、自衛隊は災害支援など「国民の安全を守る」ことに特化した活躍を続けており、それが国民からの自衛隊および憲法9条への支持につながっている。
しかし、安保法制は、その理念と大きくかけ離れたものである。「専守防衛は変わらない」と言いながらも、これまでには存在しなかった「国際秩序」に関する要件が追加されたのが大きな違いだと解説。その要件によって、集団的自衛権の下で、日本国民を守るための仕組みが「国際的秩序(利益)」であり、それを守るための一連の安全保障政策が、自衛隊を「地域」という名の全世界を守るものへと変質させている、と危惧した。
「改憲」から「壊憲」への潮流
しかし、前述のように、実際に自衛隊が守る「対象」を日本国民から「国際的秩序」へ変えようとした時、抑止する機能を果たすのが日本国憲法である。その抑止を振り払うために現政権が進めているのが「壊憲」である。
これは国際的な安全保障だけでなく、広く社会保障の分野にも見られている。行政・企業にとって法律的に不都合が生じた場合(サービス残業など)、手法を改めるのではなく、「実態に合っていない」として法律の側を変えようとするものだ。
「国際的秩序」を守るため、憲法という国民との大きな約束を壊す。平時でさえそのような対応をとる国が、いざ戦時となった場合に本当に国民を守ってくれるのだろうか。それがとても不安だ、と語った。
収奪・簒奪(さんだつ)の時代
従来の保守的思想を表すものの一つに「穏健統治」という言葉がある。これは公共事業による社会安定を目指し、金銭・経済での問題解決を図る考え方とも言える。しかし、次第に質を異にする保守が現れる。
国歌の強制をはじめとして、愛国心を煽り、「敵」「味方」をつくろうとする、そして、富める者が強くなり、貧しき者にはヘイトを煽ることによる被害者意識の醸成。これは、日本だけではなく、アメリカやヨーロッパにも見られるものであり、これを中野さんは「粗暴さを売りにしたセンセーショナリズム」と称した。
しかし、世界の人々が皆その考えに付き従うわけではない。新自由主義への反対の声がイギリスやアメリカの若者を中心に広がっている。人権の簒奪、富の収奪。求めているのは一体、誰にとっての平和なのか。「我々の闘いは、自由・民主主義・立憲主義のために世界中で長い時間をかけて先達がつくってきたもの」、それを守る闘いという気持ちを強く持って活動することが大切だ、と訴えた。
「魅せ方」SEALDsから学んだこと
次に、現在の活動の広がり方について言及。その中で、SEALDsから得られた考え方を紹介した。従来、学者の会などは「正しければ伝わる」という考え方が強かったが、SEALDsでは「メッセージ」をどうつくるか、どう見せるかに重点を置いたことに衝撃を受けたという。一方的に伝え、それで関心を持たない人が悪い、という時代は終わり、昨日までの無関心な自分にどう訴えるかを考える、という時代へ移ったのである。デモも従来の「シュプレヒコール」から、「民主主義って何だ」などをはじめとする、新しい「コール」へ。
無関心な人たちの気持ちを揺さぶるための伝え方、見せ方の工夫による魅了。学者の会の培ったものに「魅せ方」を重視した活動が加わったことが活動の広がりを強めたのである。
「リスぺクト」の精神
そして終盤。中野さんが幾度も繰り返し用いた言葉がある。それは個人の尊厳を踏みにじる戦争とは対極にある思想、「リスペクト」の精神である。SEALDsの工夫の根源には、伝えたい相手への「リスペクト」がある。
これからの闘いを見据える中で、絶対に必要となるのは投票率を上げること。選挙に行くこと、あきらめないこと、続けていくこと。個人の尊厳を大切にしない社会に未来はない。新しい未来をどう築くのかが重要であると説き、最後に「ここで止めなければ200年、後悔するかもしれない。2014年が最低、2016年から上向いたね、といつか言い合えるように頑張っていきたい」と力強く締めくくられた。
| 2007年ー2014年 国政選挙投票率等の推移 | ||||||||||
| 政権 | 選挙 | 投票率 | 自民党 | 民主党 | ||||||
| 絶対得票率(比例) | 相対得票率(比例) | 議席率(計) | 議席数(計) | 絶対得票率(比例) | 相対得票率(比例) | 議席率(計) | 議席数(計) | |||
| 安倍一期 | 2007 参院 | 58.6 | 16 | 28.1 | 30.6 | 37 | 22.4 | 39.5 | 49.6 | 60 |
| 麻生 | 2009 衆院 | 69.3 | 18.1 | 26.7 | 24.8 | 119 | 28.7 | 42.4 | 64.2 | 308 |
| 菅 | 2010 参院 | 57.9 | 13.5 | 24.1 | 42.1 | 51 | 17.7 | 31.6 | 36.4 | 44 |
| 野田 | 2012 衆院 | 59.3 | 16 | 27.6 | 61.3 | 294 | 9.3 | 16 | 11.9 | 57 |
| 安倍二期 | 2013 参院 | 52.6 | 17.7 | 34.7 | 53.7 | 65 | 6.8 | 13.4 | 14 | 17 |
| 2014 衆院 | 52.7 | 17 | 33.1 | 61.1 | 290 | 9.4 | 18.3 | 15.4 | 73 | |
| (注)自民党の絶対得票率(比例区)は2012年から16~17%台で議席率6割を占有している。 | ||||||||||
*本稿は非核の政府を求める石川の会会報「非核・いしかわ」第214号(2016年5月20日付)に掲載された中野晃一さんの講演要録です。


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