戦後憲法体制の危機と参議院選挙
法政大学教授 山口二郎
2015年安保の意義は何だったか
憲法九条が大きな訴求力を持っていることが実感できたことである。2004年に「九条の会」が発足したときは正直にいって憲法9条が無くなってしまう危機感があった。しかし、今はSEALDs(自由と民主主義のために学生緊急行動)や高校生たちが「憲法守れ!」とコールする時代になった。政治参加が選挙や議会の中だけでなく、議会外で自分たちの思いを伝えるために声を出し実際に多くの人たちが国会行動やデモに参加するようになった。気軽にデモするように政治参加の敷居が下がったことは、日本の民主政治の大きな前進である。
若者はなぜ立ち上ったのか
彼らは中高生のときに3・11を体験していることと福島原発事故に対する大人社会(政治)への憤り=公憤がある。震災・原発被災者への優しさと憤り、この二点が世の中を見る座標軸になっている。自分の言葉で語る世代であり、新しい市民的政治文化の誕生である。
哲学者の和辻哲郎は著書『風土』で次のように記述している。
「前者においては公共的なるものへの無関心を伴った忍従が発達し、後者においては公共的なるものへの強い関心関与とともに自己の主張の尊重が発達した。デモクラシーは後者において真に可能となるのである。」
忍従の精神から公共人としてのデモクラシーが日本にも出現した。
北海道衆院5区補選の教訓
北海道衆院5区補選の出口調査によると支持政党の割合は、自民・公明が49%、民進・共産・社民が26%である。従来だったら無風選挙だが、野党が結集できたことにより接戦に持ち込んだ。「野党結集vs自民党」という分かりやすい対決構図を描くことができ、SEALDsや安保関連法に反対するママの会など多様な層が政治に参加した。野党結集に共産党が入ると民進党支持の保守層が離れるという意見があったが、選挙結果をみると支持離れは起きていない。
一方、野党結集により自民党、公明党も引き締まり、支持層固めを強化した。政党支持別投票動向では、各党支持者は九割以上固まっていたが、支持なし層(24%)のうち野党統一候補に7割の人が投票している。この支持なし層、無党派層にどのように選挙に行ってもらうのかが焦点である。
戦いはこれからだ
今回の補選の投票率は57.6%だったが、これを60%台に乗せれば野党統一候補が勝利する可能性がでてくる。60%台に上げることが不可欠である。
全国32ある一人区全てで野党共闘が実現できたのは、戦後政治でも画期的で市民の力が野党を後押しして実現できた。野党結集は目的ではなく、戦いのスタートラインである。
投票日まで50日余り、私たちにできることはたくさんある。知り合い、友人に「選挙に行こう!」「市民が変われば政治が変わる」と声をかけ、多様な政治参加により、選挙を盛り上げていこう。
◎本稿は5月29日、石川県教育会館ホールでの山口二郎氏の講演要旨の一部(後半の参議院選挙に向けて)です。主催は安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める!いしかわ市民連合。



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